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恋するアイドル❤︎〜内緒の発情期〜
第10章 裏切り
「話を終えたら帰れよ」
ぶっきらぼうなのはいつものこと。
「八反田さん、今日はここに泊まるの?」
慣れたように聞き返す。
「俺の話をちゃんと聞きなさい」
「じゃあ私の話も聞いて下さい」
「聞くから」
「それならちゃんと言うこと聞きます」
彼はフロントですぐに私を帰すことを告げ許可を得た。
その間スタッフは不謹慎な笑顔で私の躰をじろじろと見回してなんだか気持ち悪かった。
「行くぞ」
それから八反田さんは4階に上がって突き当たりの部屋にキーを捩じ込んだ。
ビジネスホテルらしい鼠色の絨毯と化粧台、その対面にセミダブルのベッドが狭苦しい。
ハンガーラックにはYシャツが幾つか干してあった。
私が汚した白いポロシャツや黒のスキニーも。
そして付けっぱなしのノートパソコンには小さな男の子の壁紙が張りつけられており、少年はこちらを見上げていた。
でも彼はすぐに手を当ててその子を眠りにつかせた。
「走って追いかけてくるくらいだ。なんか用があったんだろ?」
買ってきたコンビニ袋をテーブルに無造作に置いた彼は、中から缶ビールを取り出してプルトップを捻るなりベッドの角に腰を落ち着けた。
顎先で、私にも座れと命じてくる。
一つしかない椅子に、私は座った。
何を話そう。
話したいことはたくさんあったはず。
でも、何から聞けば?
ううん、迷ってる場合じゃない。
ただ一言。
単純な話。
「会いたかったんです……」
それに尽きる。
話なんて、正直なんでも良かった。
「……それだけ?」
なのに、返ってきたのはそんな単純なもの。
俺も……だとか、無言のまま抱きしめられるそんな甘いムードを私は期待していたかもしれない。
彼は喉を鳴らしながらビールを流し込むと、馬鹿馬鹿しいとでも言いたげに眉をしかめていた。
「忘れられなくて……」
途端に心細くなった私は顔を伏せて、化粧台の上のパソコンに目を逸らした。
そこにUSBポートから伸びた配線があった。
何気なく辿る。
「……忘れろって言っただろ」
ブランド物のケースに収められたシャンパンゴールドのスマホが繋がっていた。