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恋するアイドル❤︎〜内緒の発情期〜
第12章 みほこお姉ちゃんと王子様
「いや、ほんとに、ほんとうなんです!そもそも僕は……あ、いや、俺は、上京してきてから朝飯なんてろくに食べてませんし……」
「そうなの?男なんだから、ちゃんと毎日3食たべなくちゃ。だからきっと体が弱っちゃったのよ……?」
「そうかもしれません……。実家に居た頃は、毎朝毎晩、母の手料理がありましたからね」
「ふみすけくんのお母様か……なんだか古風な匂いがするわ」
「よく分かりましたね。いつも和服に身を包んでいるような人ですよ」
「だってあなたを見てれば分かるわ。どんなご両親の元で育ったか」
二人は席に着いて楽しそうにお喋りを続けた。
わたしが途中で口を挟むように頂きますを唱えるまで、ずっとだ。
「ね?私達もそろそろ食べましょう?」
「はい、丁重に頂かせて頂きます」
「お母様の和食には敵わないけどって……ふふ、なぁにそんなに改まって」
「いや、心して食せねばと……」
「やっぱり古風よね。そういうところ。私、弱っちゃうなぁ」
それで王子様は微笑んでから、ゆっくり味わうようにスープを口にした。
出てくる言葉と返す言葉を先読みしていたわたしは耳を塞ぎたくて堪らなかった。
これから先、2人の会話は全てこうなるのだ。
考えるだけで憂鬱だ。
すっかり片付いた食卓に、今度はお姉ちゃんが好きな紅茶が出されていた。
彼女お手製のホットキャラメルミルクティーなんてものだ。
「甘いの好きでしょ?」
「はい、とても!」
ティーポットを傾け丁寧に注いでいるお姉ちゃんをじっと眺める王子様。
それで2人は、はっと同時に思いついたようだった。
ティーセット買いに行きませんか?
ティーセット買いに行かない?
台詞が重なって、2人はまた同時に肩を揺らした。
私はくまちゃんと向き合い遊んでいるふりをしてその場から消えることにした。
「みゆりちゃんも行くわよね?」
「そうだね!3人で行こう!」
けれど二人は私を世界の中心に入れようとしてくる。
デートをしたいなら、2人だけで行ってくれて構わないのに……。