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恋するアイドル❤︎〜内緒の発情期〜
第12章 みほこお姉ちゃんと王子様

「そうそう、みほこさんが嘘をついたんだ。妹が彼氏を連れて泊まりにきているから、ってね。バスルームから出てきた俺と鉢合わせの場面に対して、そうそう付ける嘘じゃないよな。はははは」

おどおどして何も言い返せないでいると、八反田さんが口を挟んで場を和ますように大袈裟に笑ってくれた。
前もこうやって笑って助けてくれたっけ……。
そう言えばあの時のお礼もまだしていない。

「あの……」

声を掛けようとしたとき、

「でも俺さ……全部分かってたけどさ……あの嘘だけは……すげぇショックだったんだよな……」

八反田さんは笑顔を貼り付けたまま寂しそうに呟いた。
私の拳が自然とぎゅっと固く絞られた。

「……お姉ちゃんからの初めての一生のお願いだったわ。なんでも先に奪ってくあの女に貸しを作るチャンスだと思った。だから私ここに赴いてやったの。その結果が、これ、だものね……。やっぱりお姉ちゃんに関わるとロクなことがないんだわ」

なほこさんは重い息を吐いて皮肉めいた。
ロクなことがない、それは八反田さんに対してあまりにも酷いセリフだ。
けれどそれを嗜めたのも結局、八反田さん本人だった。

「お前それ本気で言ってるのか?」

「ええ、本気よ。あなたなんかと結婚しなければ、こんなことにはならなかった」

「俺はそうは思わない」

「わたしは思ってるのよ」

「お前にプロポーズした時、俺は本気でお前を愛してたんだ。お前の大嫌いな姉さんなんて、もう目に入ってなかった」

「…………嘘よ。また取り繕うの?」

「嘘じゃない」

「嘘よ。あなたは大嘘つきだもの」

「ならいい。否定はしないよ。だけどつよなりは?つよなりを抱いたとき、お前、ちゃんと笑ってたじゃないか。毎日嬉しそうに歌を歌ってた。それもロクなことじゃなかったってことなのか?」

奥さんの肩に触れた八反田さんは、とても優しい旦那様だと思った。
まるで今も……。
なほこさんを愛しているのだと言わんばかりに。

「ああっ……私、ごめんなさい……ごめんなさい……つよなり!」

なほこさんはまた顔を両手に隠し泣き出してしまった。
感情の起伏が激しいのは彼女が心に病を抱えて居るからだと思った。
八反田さんはそれを分かった上でこの人に永遠の愛を誓った。
みほこお姉ちゃんではなく、この女性に……。
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