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恋するアイドル❤︎〜内緒の発情期〜
第13章 運命の赤い糸





「えーと、なほこさん……」

「なほでいいよ。なんかそれむず痒い」

「じゃ、じゃあ、なほ……ちゃん」

俺はなほちゃんと知り合ってからずっと、彼氏のふりを続けていた。
そうすることでこの風間家に出入りすることが容易だったからだ。
カップルを演じることで、みほこさんに逢える。
みほこさんの旦那のみのるさんは、義妹と、その恋人の俺を快く受け入れてくれ、疑うことを知らない。

――ふみすけ君、だっけ?みゆりがあれ以来やけに懐いてしまったってね。あの子は気難しくて……私はすっかり嫌われてしまってね。これからもよろしく頼むよ――

そんな気の優しい哀れな男を騙して、俺とみほこさんはひっそり濃密な密会を繰り返す。
然りとて以前のように毎日逢える訳ではない。
襲いくる不安定な感情だけが増えていく。
夜になれば自ずと涙が流れた。
それは決して叶うことのない恋をした人間にしか理解できない闇だ。

「何飲む?」

「俺キャバクラなんて来たの、初めてです」

片割れの羽根は夜の蝶だった。
男から男へ、その美貌で転々と住処を代えて生きている。
男にも金にも尽きない。
今にして思えば凡そ俺が相手にされるべくもない存在。

「ヘルスでもたまに仕事してるよ?良ければ相手しようか?お姉ちゃんのフリしてローションプレイしたげる」

「へっ!?」

「嘘よ嘘。顔真っ赤じゃんー!かぁわいい!」

無邪気に笑う彼女はどこか寂しげで。
彼氏のふりは、いつしかふりじゃなくなった。
互いに抱えたものが黒いから分かち合えたのだろう。
姉にそっくりな妹。
双子として生まれたその片割れ。
突然失われた俺の夜毎の快楽その矛先は彼女に向けられた。
そうやって彼女を抱いているうちに、みほこさんとの距離が出来はじめていた。
だがそれでいいと思っていた。
これが本来あるべき未来の姿。
ハッピーエンドへの道のりだと感じていたからだ。
なほちゃんと他愛のないデートを繰り返すようにもなり、俺はなかなか煮え切らないみほこさんを避けて通りたかったのかもしれない。
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