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恋するアイドル❤︎〜内緒の発情期〜
第13章 運命の赤い糸
あれ。
おかしいな……。
どうしよう。
言葉が、でてこない……。

「お、おい、みゆり。大丈夫なのか?なぁ、フミスケ君。娘はこんな状態のままで活動できるのか?」

お父さんは私の言葉を遮るようにして八反田さんに尋ねた。
私を様々な角度から覗きこみ、うろたえる様はなんだか滑稽だ。

「そんなことよりみのるさん!早く!常備している薬を飲ませた方がいい!」

「あ、ああ……そうか、そうだな!」

パニックを起こした時に飲む非常用の抗うつ薬。
八反田さんは放っぽって置かれた私の通学バックを見つけてそれを探し当てた。

どうしよう、声が出せない……。

お父さんが帰ってきたせいなのか。
過去を全て思い出したからなのか。
私の躰はあの頃みたく戻ってしまったようで、言うことを聞いてくれない。
このまま死んでしまうかもしれないと思う苦しさは今までもあった。
けど口がきけなくなるは初めてだ。

八反田さんの指先で薬を舌奥に突っ込まれ、すっかり冷めてしまったラベンダーティーでもって一気に流し込まれた。
ぜぇぜぇと呼吸をする私に八反田さんは背中をさすってくれ、大丈夫だと何度も声をかけてくれた。

「なぁ、みゆり……父さんな……」

それなのにお父さんが私に触れようとした。
直後、私の躰がびくりと強張ってしまう。
条件反射だった。
すぐに八反田さんの懐に逃げ込んだ。

「み……風間さん、こういうのはやめて下さい。僕はあくまで既婚者ですし、それに……」

八反田さんは言葉尻を飲み込んだ。
あなたに拒否されると私は行き場を無くしてしまう。
そこへ二四也くんが心配そうに私を眺め、八反田さんに縋り付いた。
私を拒んだ手で当たり前に息子を受け入れる。
見えない壁が見えたようで、思わず涙が滲んでしまった。
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