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いろごとプリズム
第4章 魔法使い花見川
昨日帰ってからサーヤは、急にいろんなことが起こり出して疲れてしまい、悠真の誘いも断って早寝していた。悠真からは今日も来るようにとメールが入っている。今日は部活はない。けれどサーヤはとりあえずこの花見川の大賞受賞作品を早く読んでみたかった。同じ小説を書く者同士、やはり作品を読めば、あのつかみどころのない彼の実態が理解できるのではないか、と考えていた。

帰宅すると、悠真から電話がかかってきた。
「おう。今日何時に来れる?」
「ごめん、今日もちょっと用事があって行けない」
「……ふぅん。お前、オレのこと避けてるつもりだったりする?」
「い、いや……、そんなことはないよ」
「じゃあなんかあった?」
そう言われて、花見川の存在が頭に浮かぶ。
「……べつに。今日ちょっと課題が多くてね。明日行くよ、ゲームの続き一緒にやろ!」
「わかった。……オレ達の続きもだぞ?」
ドキン、と胸が高鳴る。オレ達の続き……。熱いキスと胸への感触が蘇る。そしてその後に、悠真とのことを思いながら自身で達してしまったことを思い出し、恥ずかしさに襲われる。
「えーと……、じゃ、明日ね!」
高鳴る気持ちを抑えながら、サーヤは花見川匠の大賞受賞作『融合時代』を読み耽った。引き込まれて夕飯もそこそこに、一気に読み進めてしまった。

「すごい……、花見川くんってこんなにすごいんだ……」
サーヤにとってそれは、恋愛感情というのではなく、花見川匠という人間にとても興味が湧く作品だった。一気に彼を尊敬した。

「頭の中、どうなってるんだろう……」
ぼんやり彼を思い浮かべると、浮かんでくるのはこんな言葉たち。
「ねぇ、書いて読ませてくださいよ、高岡先輩の官能小説……。僕、それ読んで抜くから」
「だって僕、高岡先輩すごくタイプなんだもん。かわいいし、頭良さそうでエロい」
「僕は本気です。ピンと来たんだ」
「僕が官能小説の題材になってあれこれしてあげてもいい」
浮かんでくる言葉の数々にひとりで赤面する。こんな人が、こんな作品を……?と、天才気質を見せつけられたような気持ちと、こんな人に本当に好きになってもらえたら、どんな恋愛ができるんだろう……という淡い気持ちも感じていた。
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