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いろごとプリズム
第6章 小暮の誠実
(悠真、引きこもる前に高校通ってた頃はモテてたって言ってたなぁ……)
もし、この歌い手さんと悠真が会ったら?そんな可能性だってある。また高校に通い始めたら、校内でだってモテるだろう。あれだけ自分への想いを伝えてきてくれているのに、それでもまだ信じられないサーヤ。けど、こんな風に誰かに取られるんじゃないかと不安に想うのは、ショウマに対してはなかった……。それがまた、サーヤを困惑させた。


サーヤはまだ自分が誰を好きなのかわからない。
神山正真、神山悠真、そして花見川匠――。
自分から好きになった人はいないのに、今の自分は三人に囲まれている。この事態がまだ飲み込めていない。

モヤモヤする気分を振り払おうと、自転車に乗り図書館へ散歩に出かけたところで、図書館から出てきたのはクラスメイトの小暮だった。
「あ、小暮くん。偶然だね」
「ああ……高岡も勉強?」
サーヤに気があると言われている小暮は少し照れた表情だ。
「ううん、勉強じゃないよ、気分転換……かな」
「余裕だな。俺は今から受験勉強してるよ」
「受験かぁ……そうだね私達もう高三になったんだよね……」
なんだかそれどころじゃない生活の変化で、サーヤはあまり受験のことが頭にない。
「ああ。行くんだろ?大学」
「うーん……そうだね、まだわかんない。小暮くんこそ勉強できるんだし余裕なんじゃないの?」
「いや、俺は小心者だからさ……地道にやっときたいんだ」
「そうかー、えらいね。じゃあ、頑張ってね!」

サーヤが図書館に入ろうとした時、小暮が呼びとめた。
「あっ、あのさ高岡!」
「ん……?何?」
「ちょっと話……できる時間ある?」
サーヤは少し考えた。気分転換に来ただけと言ってしまったし、断りづらい。けど自分に気があると周りから聞いている彼の話、とは……と、気が重く感じてもいた。
「うん……、ちょっとなら、いいよ」
二人は図書館の脇にある公園のベンチに座った。
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