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いろごとプリズム
第8章 嵐の昼休み
その時、聞き覚えのある声がサーヤを呼び、小暮が振り向き立ち止まる。
「あ、高岡せんぱーい!ここにいたんですね」
花見川だ……まずい!と瞬時にサーヤは思った。昨日の今日だ、何を喋るかわからない……!
「先輩ダメじゃないですか、僕以外の男と二人っきりになっちゃ」
花見川がわざと小暮に聞こえるようにそう言うと、小暮はギロッと睨んだ。
「なんですかー?小暮先輩」
「お前どうして、俺の名前を……っ?」
「ふふ、恋敵だからですよ。小暮先輩って高岡先輩のこと好きなんですよねぇ?僕もです」
小暮が真っ赤になって怒りをぶつける。
「お、お前っ……、一年だろ?なんでそんな……、」
「年なんて関係ないでしょう?高岡先輩は昨日僕の部屋で、」
「あああああああーーーーっ!!!ストップ、ストップ花見川くん!!!」
サーヤが思わず大声を出すと、小暮は悲しそうな眼をして言った。
「……何かあるんだね、この一年と」
「はーい、ありまくりでーす」
花見川がわざとおどけて言う。サーヤはもう逃げたくてたまらない。
「とりあえず、これ読んで下さいよ小暮先輩もっ!」
満面の笑みで例の自作官能小説を小暮に渡す花見川に、サーヤは恐ろしくなった。この子は、何をたくらんでいるの……!

「高岡先輩ね、僕が書いたこれ読んで興奮してくれたんですよ」
「ちょっ、花見川くんっ……!」
小暮の顔が引きつっている。
「いいじゃないですか隠さなくたって。小暮先輩、言っとくけど僕もまだセックスさせてもらってません。でも絶対やりたいです。小暮先輩もやりたいんでしょ?高岡先輩と」
花見川の表情は、徐々に狂気を帯びた、本気の顔つきになってくる。小暮は唇を噛み締めて黙っている。
「ねぇ高岡先輩?決めるのは先輩ですよ。恋は無理にするものじゃない。先輩が欲しい男を欲しがればいい。だって他にもいるんでしょ?彼氏の弟でしたっけ」
「ほんと……なのか?」
「こ、小暮くん……、あの……えーと……」
「……いいよ、べつに。俺は俺への答えだけを、待ってるから……」
「ひゅー、かーっこいー!とにかくこれ、読んでくださいねっ!じゃあまた~」
……嵐が過ぎ去っていった。サーヤは今すぐ優奈に相談したいところだが、優奈は今ごろ屋上で芹沢と快楽を共有しているだろう……。

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