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真壁君は喋らない
第1章 真壁君は喋らない
わざわざ服を着せる方法を訊ねるって事は、幽霊は全裸、またはそれに近い格好をしているんだろう。そして以前あたしが聞いた情報からすると、真壁が借りた部屋に出るのは、女の幽霊だ。
要するに、幽霊は怖くない。けれど女に裸で居座られるのは恥ずかしいから、なんとかしたいって事か。
「でもあたし幽霊なんて見た事ないし、分かんないな……」
ちょっと突き放す事を言えば、真壁はあたしの服の裾を掴む。お前しか頼れないんだ、逃げるなって事かな。まあ確かに、真壁とまともにつき合えるのなんてあたしだけだ。だって真壁と会話するためには、シャーロック・ホームズもびっくりな推理力と洞察力で、言いたい事を察してやらなきゃいけないんだから。
「焦らない。分かんないけど……お供えでもしてみりゃいいんじゃない? 女物の服とかさ」
真壁は眉をひそめ、首を横に振る。
「そりゃ、真壁が女物の服持ってたら変態だよ! 買ってくればいいじゃん、その幽霊が好きそうな可愛い服」
あたしの服はまだ握られたままで、解放される気配はない。後輩の女の子ならともかく、あたしよりデカい野郎に縋られても、困るっての。