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真壁君は喋らない
第1章 真壁君は喋らない
「もう……」
真壁と違って、あたしは普通に幽霊が怖い。首を突っ込む義理なんか、本来はない。でも、真壁が珍しく人を頼ってきたんだから、手を差し伸べてやるのが人道ってヤツだろう。
「帰り、一緒に女物の服見に行ってあげるから! でも、選ぶのは真壁だからね」
素直にこくこくと二回頷く真壁を見て、あたしは自分が珍獣の飼い主にでもなった気分だった。
そして、買い物の後。あたしは流れで、真壁の部屋まで来ていた。真壁が上京してから、家に行くのは初めての事。きっと真壁の部屋は、私物のほとんどない殺風景な部屋なんだろうと勝手に思っていた。
「真壁……」
そう、思っていたんだけど。
「なんなの、この部屋!」
服や本は、きちんと分類されている。けれど、収納されるべき棚やタンスにではなく、すべて床に積まれていた。しかもその床を一歩進むたび、ざりざりとした触感に襲われる。
真壁はあたしの渋い顔を見ると手を叩き、シンプルな青いスリッパを差し出す。その表情は、やけに誇らしげだ。
「そういう問題じゃないっての! つーかなにこれ、塩!? 幽霊対策で捲いたの!? 効かないなら片付けようよまったく!!」