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真壁君は喋らない
第1章 真壁君は喋らない
昔真壁の家に遊びに行った時、真壁の部屋は綺麗に整理されていた。おそらくあれは、真壁のお母さんがこまめに掃除していたんだろう。
無口で人に関わらない。本ばっかり読んでいて、趣味らしい趣味もない。生活力も低い。真壁は一体、日々蓄えるカロリーをどこで消化しているんだろうか。
「……とにかく、掃除ね。いい、真壁。幽霊は、不浄な場所を好むんだよ。部屋をピッカピカのキッラキラにしてやれば、幽霊から逃げていくはずだから!」
まあいい。真壁が変人なのは、今に始まった事じゃない。真壁がどんな生き方をしていようが、一緒にいて居心地が良ければそれでいいんだ。
尊敬の眼差しを向ける真壁に掃除用具の場所を尋ねると、首を横に振られてしまう。
「自分でやるなら、あたしちょっと休むよ。布団借りていい?」
どうせ真壁は答えないだろうから、あたしは勝手に唯一の聖域であるベッドへ身を投げる。ちょうどいいや、真壁なら掃除してても五月蠅くないだろうし、ちょっと眠らせてもらおう。
真壁のベッドは、昔から心地がいい。柔らかくてフワフワで、なんかいい匂いがする。今もそれが変わらないって事は、どうやらベッドは真壁自身のこだわりだったらしい。