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夜は、毎晩やってくる。
第1章 プレイ・フォー・ペイ
上唇と下唇がそれぞれ融け合って、ひとつになってる。
鈴木山くんと、あたし、ひとつになってる。
あ、ああんっ……って、ヤバイ……変な声、出ちゃいそうになる。
ぴちゃ……
唾液が跳ねる音がした。
少し……あ、鈴木山くんの唇が動いて、吸われてる。
緩やかな吸引が、そのままあたしの唇の隙間から魂を引きずりだそうとしているの。
ちゅるちゅると、震えながら水音をたてて、わたしの心がうばわれていく。
すっと、肩に手が添えられた。
その手が背中に回って、あたしを椅子から抱き起す。
ああんっ、そんなこと……あたし、立っていられないのに。
もう、全身が唇と同じように柔らかくなってしまっているのに。
駄目……っ
財布を取り出すために開いた学生服の襟元に必死でしがみつくあたしを、鈴木山くんががっしりと抱き止めて支えてくれた。
男の子の胸の中だ。
それは、思っていたより広くて、大きくて、温かで……。
いっそう甘い陶酔へとあたしを誘う。
「は……あぅ……んっ……」
声……出ちゃった。
「美緒……」
鈴木山くんが口を離してあたしを見下ろし、名前を呼ぶ。
お父さん以外の男の人に、下の名前を呼び捨てにされたことなんて、なかった。それに初めて気がついて。
きゅぅぅぅぅんって、お腹の下の方が熱くなる。
「あ……」