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夜は、毎晩やってくる。
第1章 プレイ・フォー・ペイ
釈然としないままでいると、男の子の中のうち、背の高い鈴木山くんが言った。
「バッカじゃねーの? だいたい高すぎんだろ、キスで一万とかありえねー!」
他の二人の子たちも一緒になって笑う。
それでも詩利香はひるまなかった。
「バカはそっちよ! ファーストキスだぞ、一生に一度なんだよ! 一万でも安いくらいじゃないの!」
「えっ、それマジ……?」
ちょっと真顔に戻って鈴木山くんたちが顔を見合わせる。
えっ、それってどういう反応なの?
「渡辺って……マジ、ファーストキス?」
質問が返ってくる。
あたし、どういう風に思われてたんだろ?
てゆーか、なんか凄い恥ずかしい!
カアッと顔が熱く火照る。
絶対真っ赤になってるよ、これ!
「マジよ、マジ。本当にファーストキス。誰も触れたことのない唇。プライスレス」
「いや、プライスレスって、今、一万っつたじゃねーか」
「バーカ! それだけお値打ちって意味だっつの! 一万なら安いよ!」
詩利香ちゃん……なんか複雑な気持ちだよ、私。
「てか、本気なの……か? 金払ったらマジでキス?」
「本気、本気!」
と、詩利香が煽る。
「お前に訊いてねーよ、渡辺だろ、キスするのは!」
「本気だよ。ね! 美緒?」
詩利香が私に向き直って覗き込むようにして見つめる。
男の子たちも一斉に私の返事に注目する。