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夜は、毎晩やってくる。
第1章 プレイ・フォー・ペイ

「なあ、長瀬、五千円にしろよ」

 鈴木山くんが詩利香に言う。

「駄目だって、ファーストキスだって言ったでしょ……」

「俺もなんだ」

「えっ?」

 あたしと詩利香が同時に声を上げて、目を丸くする。

「俺も初めて。だから、相殺で半額」

「え……ええっ……と?」

 この申し出にはさしもの詩利香里も面食らったらしく、答えを求めるようにあたしの顔を見てくる。

 でも、あたしだって、どうすればいいかなんてわかんないよ。
 同じような顔で詩利香と目を合わせる。

「ええと……その、なんだろ。半額ってどうなのかな……女と男じゃファーストキスの価値って違うよね?」

 ようようのことで詩利香が口を開く。
 考えながら喋ってるのがありありとしていた。

「うわっ、ヒッデーな! なんだよ、それ!」

 鈴木山くんが反論する。
 確かに、ちょっと酷いかも……。

「……俺、渡辺ならいいかなって。俺のファーストキス」

 ドキッ……!

 その言葉に、なんだか少し締め付けられるような感じを覚えるあたしの胸。

「だからさ、五千円にしてよ!」

 そう言ってチャーミングなウィンク。
 あたしに向かって。

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