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夜は、毎晩やってくる。
第1章 プレイ・フォー・ペイ
「駄目っ!」
詩利香が大きな声で拒絶した。
もう迷いはなくなったみたい。
「だいたいアンタが初めてだなんて証拠はどこにあるの? そんなんで値引きなんかできないわよ!」
「えっ……いや、証拠って……そんなん言ったら、渡辺がファーストキスだってのだって……」
「あっ……ヒッドーイ! 美緒が傷つくでしょ!」
「ちょっ! 俺は傷ついてもいいのかよ!」
「うるさいわね! 男のクセに細かいことをピーチクパーチク……」
「……いいよ!」
思わずあたしは詩利香と鈴木山くんの言い争いに割って入っていた。
その叫ぶような声に二人が驚いてこちらを見る。
「いいよ……五千円で。鈴木山くん……キスしよ」
自分が今どんな顔をしているのか、自分でも想像がつかなかった。
でも、ちょっとだけ、あたしは嬉しかったんだと思う。
鈴木山くんは言ってくれた。
あたしならって。
だから、いいんだ。
売ってあげる。あたしの生まれて初めての……
初めての……。
決心したはずなのに、いざそう思うと急に体が震えだす。
体中がぽわっと温かくなって、なんかフワフワする。
椅子に座っているのに宙に浮いているみたい。