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秘密の二段ベッド
第3章 お兄ちゃんの憂鬱
太陽が高くなってきてベンチを覆っていた日影が小さくなっていく。ジュースもすぐなくなって、しょうがなく立ち上がった。
またゆっくり歩きだす。

途中、同じ中学のカップルを見かけた。学年で一番最初にできたカップルだって有名だった。クラスは番うけど噂で聞いて友達とわざわざ見に行ったことがある。
確かにお似合いで、なんだか大人びて見えた。

二人は楽しげに笑いながら通りの向こうを横切って行く。よく見ると手を繋いでいるみたいだった。
いいな。
知らずに声が漏れた。
頭の中で勝手に自分とあやねに姿を重ねる。
大きくなって、小さい頃のように手を繋ぐなんてことはなくなった。

手を繋いで歩いて、隣で笑うあやねを想像する。
そのまままたイケない方向に想像が膨らみそうになってぶんぶん首を振った。

はぁ、とため息が漏れる。
その時ふと、もしあやねと手を繋ぐのが自分じゃなかったら、と思った。
誰か全然知らない奴があやねの小さな手を握る。
それだけじゃそいつは満足しなくて、あやねに抱きついて体を撫でてキスをして……。

ゆうべ聞こえた声を思い出す。
あやねの小さな喘ぎ声。あれが誰か別の男に愛撫されて出す時がくるとしたら……。

僕は走り出していた。
何故かわからないけど、早く帰ろうと思った。


汗だくになって玄関を開ける。
あやねの靴以外見当たらない。友達は帰ったんだろう。
母さんはパートの時間だ。

ぜぇぜぇいう息を無理やり落ち着けて、リビングの扉を開ける。
数歩進むとソファの肘置きにあやねの頭が見えた。覗き込むと、スゥスゥと寝息を立てて眠っていた。
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