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秘密の二段ベッド
第1章 はじまり


なんて言えばいいんだろう。あの時わたしは、怖いんだけど不思議に落ち着いていて、そしてドキドキしていた。嫌なドキドキじゃなくて、もっと、胸が高ぶるようなドキドキ。
顔が熱くなって、たぶん鏡で見たら真っ赤になってたと思う。

「お兄ちゃん何してるの」って、声をかけたかったけど、そしたらお兄ちゃんは「それ」をやめてしまう。
それがなんとなく解ったから、それに、最後まで「それ」を聞きたかったから、わたしはぎゅっと布団を掴んで我慢していた。

全身に力が入っていて、特に足を強く閉じていた。
その時は無意識だったけど、後々なんで自分がそうしていたのか解るようになる。

ハッハッ、と短く息を吐き出す音が連続して聞こえて、それからすぐ
「っぁっ……!」
と短く小さい声がしたかと思うとギッ、ギッ、とまたベッドのきしむ音。
それから溜めていた息を一気に吐き出す声が聞こえて、ようやく静かになった。

しばらくして何かごそごそする気配がして、ゴミ箱に何かが落とされて、お兄ちゃんが布団を整えて横になるのが音で解った。
わたしのドキドキはなかなか収まらなくて、でもお兄ちゃんはすぐ寝息を立てだして、いつも聞いているはずのその寝息がなんだか知らない人のものに思えてわたしは全然寝付けなかった。
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