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秘密の二段ベッド
第1章 はじまり
次の日、いつも通り起きてきて皆におはようを言うお兄ちゃんを見てもしかしてあれは夢だったんじゃと思った。朝の食卓に着く様子があまりに普段通りだったから。
あんなに、息を荒くしてたのに。
あんなに、ベッドをきしませていたのに。
あんなに、苦しげな声を出していたのに。

わたしはこっそりチラチラとお兄ちゃんを観察した。
お父さんに似たちょっと細面の優しげな顔。肉が薄くてスッと通った鼻筋。切れ長の目にいつも微笑んでいるような唇。
猫っ毛の髪が朝日に柔らかく光って思わず触ってみたくなる。
じっと見ていると、いつも通りなのに全然知らない人の顔に見えてくるのが不思議だった。

この人の、イケナイところをわたし、聞いちゃったんだ……。

そう思ってハッとなった。今こんなに普通ってことは、昨日のが初めてじゃないってこと?
気付かないうちにもう何回もああいうことをしていて、知らないうちにお兄ちゃんはそういうのを隠せるようになってるんじゃ……。
だから、いつも通りに見えるの?

思わずお兄ちゃんの手を見つめる。
お箸を持つ右手。
指が長くて、ちょっとごつごつした感じで、大きな手。
初めて会った日、転びそうになったわたしを支えてくれた小さな手とは違っていて、いつの間にあんな、大人の人みたいな手になってたんだろう。

お兄ちゃんはもう大人の仲間入りをしてるんだ。
声だって低くなったし、背もたくさん伸びてもうすぐ170に届くっていってたし。
だからゆうべも、あの手で自分の大事なところを……。

わたしはお兄ちゃんのえっちなシーンを想像してしまいそうになって頭をブンブンと振った。
「あやね? どうしたの」
正面から声がかかる。お兄ちゃんの不思議そうな顔をまっすぐ見れなくて、わたしはまたブンブン頭を振って「なんでもないっ」と答えるのが精いっぱいだった。
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