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Birthday’s
第3章 番外編ー由美子と誠ー
覚えてはいるだろうが、いつもと違う夫の行動が、夫の演出だという発想には至らないらしい。
この屋敷で勤めるようになって、もう10年近くになる。
今年で結婚して30年になると聞くが、歳をとっても仲がいいご夫婦だ。
ベタベタしたりはしないが喧嘩もしない。とてもよい距離感のご夫婦だと思う。
誠が一途に妻の由美子を想っていて、遊びも浮気も聞いたことがない。
そして、誠はとてもロマンチストだ、と恭子は思う。
三日前。
仕事を終えて自室に下がろうとした恭子に、誠が話しかけてきた。
「清水さん。ひとつ、お願いしたいことがあるんだけどね。」
「何でしょうか?」
「金曜日、お茶の時間にクッキーを焼いてほしいんだ。そして由美子に食べてもらって。中にはこれを入れて欲しい。」
そういって渡されたのは、小さく折りたたんだグラシンペーパーが3枚。
「フォーチュンクッキーですか?お若いですね、旦那様」
フォーチュンクッキーなど、もう随分と作っていない。
誠は微笑んで、
「恥ずかしいから中は見ないでね。」
と念を押した。今年で還暦を迎えようというのに、子供のような笑顔だった。
だから、今日は今からラングドシャを焼く予定だ。
メモは3枚だから、フォーチュンクッキーを3つだけ作ることになる。
中身は見ていないので知らないが、いずれ誕生日のお祝いか、愛のメッセージだろう。そういう人だ。
この屋敷で勤めるようになって、もう10年近くになる。
今年で結婚して30年になると聞くが、歳をとっても仲がいいご夫婦だ。
ベタベタしたりはしないが喧嘩もしない。とてもよい距離感のご夫婦だと思う。
誠が一途に妻の由美子を想っていて、遊びも浮気も聞いたことがない。
そして、誠はとてもロマンチストだ、と恭子は思う。
三日前。
仕事を終えて自室に下がろうとした恭子に、誠が話しかけてきた。
「清水さん。ひとつ、お願いしたいことがあるんだけどね。」
「何でしょうか?」
「金曜日、お茶の時間にクッキーを焼いてほしいんだ。そして由美子に食べてもらって。中にはこれを入れて欲しい。」
そういって渡されたのは、小さく折りたたんだグラシンペーパーが3枚。
「フォーチュンクッキーですか?お若いですね、旦那様」
フォーチュンクッキーなど、もう随分と作っていない。
誠は微笑んで、
「恥ずかしいから中は見ないでね。」
と念を押した。今年で還暦を迎えようというのに、子供のような笑顔だった。
だから、今日は今からラングドシャを焼く予定だ。
メモは3枚だから、フォーチュンクッキーを3つだけ作ることになる。
中身は見ていないので知らないが、いずれ誕生日のお祝いか、愛のメッセージだろう。そういう人だ。