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第29章 神戸へ

　オナニーの後の心地よい疲労感と余韻で、玲奈は深い眠りについていた。
　目が覚めた時には夕陽が沈みかけ、辺りに夜の帳が降り始めていた。


（うそっ、五時回ってる。着替えんと。身体綺麗にせなんだら、、。）


　急いでシャワーを浴び、身支度を調えた。
　部屋に鍵をかけ周囲を見回しながら、慌ただしく職場のビルを後にした。
　バス停で、バスを待つ列に並びながら玲奈はこの一週間の出来事を思い返していた。
　満員のバスにもまれながら、自分が危うい立場に居ることを意識していた。


（先週からやのに、あの人の思い通りになってる。いややのに、離れられへんようになってる。あんな恥ずかしいことされてんのに、あたし、拒否できひん。むしろ、もっと滅茶苦茶にされたがってる。いややのに、止めて欲しくない。いつかは、家の人（うちのひと）に知られてしまう。けど、、、。）


　夫と子供の顔が交互に浮かんでは消え、彼女に失う物の大きさを教えた。
　唇を噛み、後悔を頭から振り払っていた。
　十五分もすると自宅近くのバス停に着き、バスを降りるとユックリと歩き始めた。
　自宅の扉を開け、家のなかに入ると子供達が待ち兼ねたように、玲奈に抱きついてきた。
　子供達の体温が彼女に家庭の暖かさを、思い出させた。


「正、マキ、良い子にしてた？美味しいごはん作るからね。もう少しまっててね。」


　玲奈の心にズキンと何かが突き刺さった。


「お帰りなさい、玲奈さん。会社の同僚の人かな、女の人が電話してきたから昨日はビックリしたわよ。けどまあ、玲奈さんが新しいプロジェクトの担当なんて、ビックリしたわぁ。子供たちは、エエ子にしてたわよ。」


「お義母さん、ありがとうございます。夕食の支度をしますね。」


　夫の母親と笑顔で話し合いながら、台所へみんなで一緒に入っていった。
　日常の生活に戻りながら、玲奈は普通に暮らす幸せを感じていた。
　子供達と夕食を済ませ、お風呂の準備をしていると、玲奈の携帯が鳴った。


「はい、私です？あなた、昨日はごめんなさい。」


「うん、いいよ。仕事なんて、珍しかったからね。俺も明日から出張でな。準備しといてくれるかい？」


「えっ、出張？あの、何日くらいなの？三日って、準備してして置きます。」


「あぁ、じゃあ、頼むわ。今晩、少し遅く寝るからねぇ。ほな、よろしく。」