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第8章 Lesson 困惑

驚愕して顔を引き攣らせているとヤナセは小さく微笑んでからスッと笑みを消した。

「本当に……皆さんここまで頑張ってらっしゃいました。だから錯覚を起こす場合があります。自分はもっと頑張れると……努力は必要になりますが、無茶はすることはないんです」

トックン――――

ヤナセの言葉が胸に響く。

ちゃんと自分の置かれている現実や立場を認識していかないと、自己満足に走って『無茶』をしてしまうのかも。

それだってきっと『慢心』なんじゃないかな……。

慢心すると正しい判断が出来なくなるし、些細なことも見落としてしまうかもしれない。

ヤナセがそういう意味で言っているかは定かじゃないけど、自分にしては珍しく冷静に考えられた。

今回サナを通して気付かせて貰ったのかもしれない。

「はい……良く解りました」

神妙な面持ちで頷くと

「クス……特に琴海さんが一番無茶をしますので……先ずはご自身を最優先にして下さいね」

「えっ！　私！？」

そんなつもりはないと言いたかったけど、今までヤナセに掛けた数々の迷惑を考えると素直に認めざる得なかった。

「はい……重々気を付けます」

「クスクス……お願いします。皆さん……お互い無茶をしない程度に、励まし合って下さい」

「はい」

畏まって頭を下げる私にヤナセはいつもの優しい笑顔で微笑み掛けてくれた。

この笑顔と優しさに、どれだけ励まされてきただろう――――

私もこんな風に、誰かを励まして支えていけたらいいな……。