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第8章 Lesson 困惑

「へ？」

何事かと思って振り返ると、ワタリの視線は下に向いている。

視線の先には、今にも倒れそうに青白くなって座り込んでいるサナの姿があった。

「サナッ！」

「チビッ！　ヤナセ呼んで来い！」

「は、はい！」

サナの状態に焦りそうになった私へ、ワタリはドスの利いた声で指示を出す。

怯えてしまいそうな怖い声が、私を冷静にさせた。

ワタリは素早い動作で座り込み、サナの様子を診始める。

ヤナセ！　何処に居るんだろ？

広いフロアをキョロキョロ見渡してヤナセを探す。

「琴海さん！」

私が見付けるより早く、ヤナセの方から駆け寄って来てくれた。

ワタリの声が響き渡ったから、呼ばずとも気付いたに違いない。

「ヤナセさん！」

ヤナセの顔を見た途端、安心感からか泣きそうになる。

顔を歪ませた私にヤナセは軽く頷いてから、ランニングマシーンへ走っていった。

必死で後を追い掛けると、いつの間にかホズミとハナブサが野次馬を作らないように立ちはだかってバリケートを作っている。

この用意周到さは流石、四天王！

四人が固まっているだけで、漂うオーラに他の講師は近付きにくくなって遠巻きに様子を伺っていた。

貧血だろうか……気を失うまではいっていないが、支えるワタリの腕にサナはぐったりと寄り掛かっている。

そんなサナをワタリは、脈を計ったりと状態を確認したりと本当の医者みたいだ。

ワタリは向かい側にいたヤナセに目で合図をすると、サナを軽々と横抱きで持ち上げた。