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第18章 I Lesson ５回目

「いや、違うけど～」

「それ以外、何かあったっけ？」

本気で分からないのか、惚けた口調で返される。

「ほら、あれ、あれ。お尻と言えば……」

「えっ！　どっちがしたの？」

『お尻』だけで一瞬にして分かるなんて、やっぱりコウセイだ！

「あはは！　色々とあって、私が相手の穴にズブッとしちゃった～」

「へぇ～。研修から飛ばしていくなんて、やるな～琴ちゃん！」

「えへへへ。致し方なくて」

別のものを飛ばしたのは私じゃなくて、クニミツだけどね――――。

心の中でそんなことを呟いている間に、コウセイが頬に顔を寄せてきた。

キスされる――――

そう察した時には、コウセイの唇は肌に触れていた。

レッスンがはじまった――――。

途端、胸の奥がキュッと気が引き締まる。

コウセイは頬を数回、ちょんちょんとスタンプしながら、唇をずらしていく。

口端まで近付いてきた柔らかい感触に、閉じる目元に自然と力が入った。

唇が触れ合うより先に、記憶がキスの感触を蘇らせる。

「あ……」

軽く開いた唇の上を撫でるようにくすぐる記憶は、コウセイのものではなくて――――

セイジとのキス――――。

レッスン前に交わしたセイジとのキスが、唇の表面を覆っていくと、背中に電流が走ったみたいな痺れを感じて小さく震えてしまった。

前例のあるコウセイだからなのか、またしてもこのタイミングでセイジの記憶が私を支配し始める。

リクの時の恐怖感とは違うけど、それ以上に厄介な状況になりかねない。

コウセイが受付担当として初めて迎える『卒業レッスン』の予行練習なのに、絶対にトラブルを起こしては駄目だ！！

どうしよう――――

やっぱりキスしない方がいいのかな？

今キスをしなくても、コウセイなら本番上手く乗り切れると思うけど、今後ずっと変な気を遣わせてしまう可能性もある。

前の私は生徒だったけど、今はもう講師なんだ――――。

それも『内緒のキス』をレッスンに持ち込むのは、それこそ『タブー』だろう。

キス一つに悶々と悩んでいると、コウセイの唇が――――