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ラブカルチャースクール 3
第20章 I Lesson 6回目
「き、気合入れていたんですよ!」

「そうなんですか? 河豚みたいでしたよ」

「フグゥゥゥ~!? 酷い……」

「ははは、すみません。レッスン中は、今みたいに膨らまないで下さいね。ウッカリ射精しちゃいそうですから」

「えっ!? 分かった……気を付ける」

「あははっ! お願いしますよ」

よし、何かあったら頬っぺた膨らませてやる! ――――なんて、目論んでしまう。

珍しくリクと、普通に話せた気がする。

これが本来のリクなのかは謎だけど、出来ることなら今だけでもこのままでいて欲しい。

ほんの数秒だけ流れた、穏やかな空気――――。

今日のレッスンが終わる頃には、また味わえるだろうか。

いつもだったら、こんなお喋りしていたら「煩い!」とか喝を入れきそうなワタリだが、腕を組んだまま黙って私たちのやり取りを眺めていた。

仏頂面の細い目で凝視しているから、実のところ睨んでいるのかな?

そんなこと考えていたらワタリと、目が合った。

ギロリッ! ――――鋭利な刃物のようなイーグルアイに、瞬殺される!!
――――かと思いきや、ワタリの表情は特に変わらない。

いや、違う――――細められた目の奥から、何かを語りかけてきているよう感じる。

途端、懐かしい記憶が蘇ってきた。

『本気なのか……マスターに……講師に成るなんて?』
『じゃあ……本気で掛かって来い!』

ラブカル講師を目指すために通った『マスターコース』。

先が見えない不安に、いつまでもグズグズしていた私に、ワタリが渾身の『喝っ!』を入れてくれたレッスン。

あの時は、ワタリに会うたびに怖くて仕方なかった。

だけど――――泣きべそかきながらでも私がこうやって女性講師になれたのは、ワタリの存在が大きい。

身体も、何もかも大きいけど。

きっと前のワタリなら「さっさと始めろ!」とか言うところだろう。

「ワタリさん……レッスン始めさせて頂きます」

「……あぁ」

敢えて何も言ってこないワタリの胸の内を信じて、私は自分からレッスン開始を切り出した。

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