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第25章 Lesson 尊敬と愛

ヤナセは腕を組むようにして、片手だけ顎に添える。

軽く曲げた指を唇に添えて微笑むだけなのに異様に色気を放つのは、見た目が美しいのもあるけど、身体全体の成分がフェロモンで生成されているとしか思えない。

大事な話をしているのに余りの強力な色気に、ついつい思考が脱線してしまう――――。

「取り敢えず……アラタは、このまま泳がせておくことにしよう。こっち側に付かせる以前に、講師として成長出来るかも微妙な段階だしな」

「あぁ、あの性格はスクール講師として厄介だもんな。目が離せないけど今回のことではある意味、役に立つかもしれないっていうことか」

どうやらアラタは講師として首の皮一枚繋がったようだけど、それと引き換えに反対勢力の動向を探るのに一役買って貰うみたいだ。

あのアラタのマイウェイぶりが、私とセイジ――――ラブカルの未来に繋がって行くのかと思うと期待より不安が大きいが、ここは何としても頑張って貰うしかない！

「だと……いいがな」

「ははは！　……」

軽快に笑ったかと思ったら、ここでセイジが口を噤んで私の方に視線を向けてきた。

その瞳は、何処か寂しげで――――切ない。

ドックン――――セイジの憂い気な瞳に感応するように、胸の奥が締め付けられる。

セイジ、どうしたの？

ヤナセが居る前で聞いてもいいのか悩んでしまって、首を少し傾けた。

そんな私にセイジは唇を噛んで苦笑いしてから、憂いの理由を語だす。

「アラタにはさっき、厳重に注意しておいたから。スクールのルールが変更されるのは確定じゃないし、それ以前に琴海さんに恋愛的な気持ちをアピールするのは根本的に間違っているって」

「はい……」

セイジが伝えようとしている言葉の意味に、彼の『苦しさ』を察する。

私は彼の気持ちを受け止めるように、ただ相槌を打つことしか出来ない。

アラタに許されないことは、『今は』どの講師にも許されていないこと――――それがラブカルの『禁断行為』。