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ラブカルチャースクール 3
第26章 Lesson ご褒美
こんなことで泣いちゃだめだ。
これからだってまた同じことが、何回もある筈なんだから――――。

そう自分に言い聞かせ、込み上がってくる私的感情を抑えこもうとするが、簡単には引っ込んでくれない。

せめて周りの人に悟られないようにしなきゃ。
トレーニング室に行ったら、人気が少ないとこに行こう――――。

「てかこの話ばかりしてないで、いい加減トレーニングに行くわよ」

いつものように少し説教ぽい言い方でも、口調はどこか明るくカレンが言った。

「はいは~い! 候補者も探さないとだしね~」

「そんなことしないわよ。注意力欠けると怪我するわよ」

「はい、はい! カレン様は怖いわね~!」

「そういうあんたは、少しはしとやかにしなさいよ」

相変わらずなジュリとカレンのやり取りだが腹割って話した後だからか、息の合った掛け合いに聞こえてしまう。

元気な歩調の三人の後ろに、俯き加減で付いていく。

「コトミ、なんか顔青くない?」

「え……」

前を歩いていて、私より二十センチは背が高いサナが、俯いていた私の様子に気付いた。

落ち込んでいたのがバレて一瞬焦ったが、それ以上にサナの優しさに胸がギュウっと締め付けられる。

「えっと、大丈夫。今日も色々あって疲れてて……」

「セイジのこと、心配?」

「えっ!?」

サナのストレートな質問に、今度は心臓が口から飛び出そうになった。

ど、どうしてサナがセイジのことを聞くの!!
普段はポーカーフェイスなようで、実は私の気持ちにとっくに知っていたとか?

「なん……で?」

「あ~いやさ……全員セイジを選んじゃったじゃん。ある意味、候補のようで候補じゃないって言うかさ。私も他に無難な人思い付かなくて……ごめんね」

「サナ……」

ちょっとはにかんでそう言ったサナの言葉には、嘘偽りはないと思った。

多分サナは率直に、『無難=安心』出来る講師のイメージでセイジにしたんだと思う。

「ううん! セイジは生徒時代から大人気だったし、安心出来るオーラを発しているもんね!」

「はは、オーラって。確かにそうかもね……」

サナは笑っていたけど語尾を濁し、少し考え込むように間を置いた。


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