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ラブカルチャースクール 3
第26章 Lesson ご褒美
もし、あの時セイジに出会えていなかったら――――。

元旦那との上手く嚙み合わない生活を何とか改善したくて、一歩踏み出した日に、私はセイジと出会った。

セイジからしたら『再会』だったけど、色々妥協して、自分自身を無理に納得させて、ラブカルに通うことを諦めていたら『再会』すら叶わなかったのだ。

そしてセイジに会って、いけないと分かっていても恋をしてしまった。

「本当に、色々あったな……」

ほんの一年ちょっとの出来事なのに、内容が濃すぎて何年も経った感覚に陥る。

女性講師になって自分と同じように悩んできた人の役に立ちたい気持ちは変わらない――――けど、

その決意に負けないくらい、セイジと結ばれたい想いが自分の中で溢れでてしまう。

セイジへの気持ちが強すぎて、それが自分の勇気にもなれば弱さにもなるのが『不安要素』なのだ。

「まだまだ、ダメだな……」

こういう時はワタリにでも一喝して貰ったら、気合いが入るかもしれない。

「う~ん。今回の選択にワタリを入れておけば良かったかな?」

眉間に立て皺をつくり、腕を組んで想像してみる――――。

『甘ったれるなっ! そんなことで講師が務まるとでも思っているのか!』

「ひぃぃぃぃっ! ごめんなさい!」

鋭いイーグルアイをギロリと光らせて怒号を上げるワタリを頭に浮かべただけで、全身が縮み上がる。

「あはは……や、やっぱり今日は、癒しがいいな」

ワタリを勝手に登場させておいて、なかったことにしようと、頭の浮かんだワタリの顔をキュキュッと消し去った。

「ごめんなさい」

恐れ多くもラブカル四天王に対して申し訳なく思い、目の前に居ないワタリに手を合わせていると――――。

コツコツコツ――――今日の担当講師が近付いてくる足音が聞こえた。

き、来たぁぁぁ!

合わせていた両手の指先を伸ばしたまま、太腿の横に咄嗟に移動させる。

この足音、誰だろ?

以前は足音で、何となく担当が予測出来たこともあったけど、スキップはしていないから姉さんではないのかな?

もしそうなら、残るは二人だ――――。

緊張しない人を選んだ筈なのに、やたら心臓がバクバクしていた。


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