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初花凛々
第12章 空は瑠璃色
麻耶の車が和みの湯に着き降りると、温泉の香りが凛の鼻を擽る。もう夜が近づいた夏の空は、所々に星が輝き始めている。それを眺めてから、麻耶と凛は玄関へ入った。


「あ!今日はコーヒー牛乳がない……」


温泉に来たら、凛はまず始めにロビーの冷蔵庫をチェックする。しかし今日は凛のお楽しみのひとつであるコーヒー牛乳が無かった。
凛はガックリと肩を落とした。


「んじゃあ今日は家族風呂だからね」

「えっ嘘!」

「嘘」

「もう!」


麻耶はあっさりと騙される凛に笑い、男湯へと消えた。
いきなりの麻耶の冗談に翻弄されながら、凛は女風呂の暖簾を潜った。

今日は凛は、お気に入りの中でもとっておきのボディソープを持参してきた。桃の香りがして、肌がしっとりと滑らかになる美容成分入りのもの。
香りと手触りが良くなるように。


そう、麻耶との練習に備えて。


_____しっかり洗った方がいいよね……。


凛は優しく、丁寧に身体の隅々まで洗った。髪もいつも以上に念入りに。


これから女になると意識している凛は、今日は熱い湯船に浸かっても唸り声は出なかった。代わりに出たのは、少し憂いを帯びた女の溜息。


_____麻耶は、どういう風に私を_____


キスは無く、指のみで。


事前に麻耶から発表されているプランを頭の中で何度も反芻しては、恥ずかしくなったり、不安になったり。


_____あぁもう、のぼせちゃいそう。


凛はいつもより少しだけ早くお風呂を済ませた。











「おねいさん!」


ロビーへ出ると、まだ麻耶の姿は無く。代わりにいつも会う女の子が凛に話しかけてきた。


「こんにちは」


挨拶をする凛に向けて、女の子はピンク色の瓶を差し出してきた。


「これ、あげるよ!」


差し出されたそれは、イチゴ牛乳だった。


「え、どうして?」

「この間のお礼だよ」


女の子はニコニコと向日葵のような笑顔を凛に向けていた。


「……ふふ、この子ね、お姉さんに憧れているみたいで」


その女の子の母親が、凛に話しかけてきた。女の子にそっくりな、向日葵の笑顔を浮かべながら。




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