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初花凛々
第2章 蝉時雨
傘を片手に、自分のデスクに戻った。


「ちょっとくるちゃん先輩!何してるんですか!」


声を抑えて凛に話しかけてきたのは、可愛い後輩の新山。


毎日ロッカーに入ったままの傘を見てはため息を吐く凛の事を、ずっと見守っていてくれた一人だ。


「…くるちゃん先輩はもうダメです。」

「もう!そんな事言わないでリベンジしましょう?」


新山は凛によく懐き、胡桃沢という名字から、くるちゃん先輩というなんとも愛らしいニックネームで凛を呼ぶ。


初めは気恥ずかしかったが、二人の時ならいいよと、その呼び名を許可したのだ。


「それにしても、須田さん今日もかっこいいですね」


新山はほうっとため息まじりに、熱っぽい視線を須田に向けた。


「はぁ?どこが!?」

「えー?かっこいいじゃないですかぁ」

「いや、どこが!?」


新山が言うには、須田は無造作にセットされた栗色の髪がよく似合っていて、鋭くて大きな瞳が魅力的……らしい。


凛が思う須田のマイナスな所が、世間的にはプラスな所という事実に凛は驚愕した。


「……私は、嫌い」

「え?」

「人を馬鹿にしたみたいにニヤニヤしちゃって!元々男は苦手だけど、須田は群を抜いて_____ 」


そう言いかけたところで、新山が凛の肩越しに何かをあわあわとしながら見つめている。不思議に思い、恐る恐る振り返る。


_____と、そこには。


「へぇ。俺がなんだって?」


また、人を小馬鹿にした様な笑いを浮かべた須田が、そこにいた。
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