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初花凛々
第13章 玉響の恋
麻耶の腕の中に収められた凛の耳には、麻耶の鼓動が届く。


いつもは優しいリズムを刻むその音が、今日はなんだか違うな、と凛は思った。


「麻耶、ドキドキしてる」


いたずらっ子のように凛は笑った。


「……当たり前じゃん」


反対に麻耶は、ふてくされた子どものように。


「ドキドキするんだ?処女相手に」

「何言ってんの。するに決まってる」

「天下の麻耶なのに?」

「そう。天下の俺様なのに」

「自分で言う〜?」


ケラケラと凛は笑い、そんな凛を麻耶はグッと胸から引き離した。


そして、真剣な眼をした麻耶と、まだ笑いの余韻が残っている凛の眼が合う。


「……っ!」


麻耶は凛の隙をついて、凛の首筋をペロッと舐めた。


「擽ったい……麻耶……」


時折、ひゅっと息が肌にかかり、その刺激に凛は腰が浮いてしまう。


「余裕そうだから、もーちょいやるわ」


仕返しだと言わんばかりに、麻耶は先ほどの凛のようにいたずらに笑う。


「もーちょいって……あっ!」


凛はつい、大きな声を出してしまう。なぜなら、胸への刺激とは違う、下への刺激が凛を襲ったから。それはショーツの上から、更に部屋着のショートパンツも隔ててだけれど、凛にとっては刺激的すぎるほどの刺激。


「麻耶……っ」


いきなりのことに動揺を見せる凛。仕返しのつもりもあった麻耶だったけれど、凛の意思を無視して強行なんてしない。それをわかっている凛は、麻耶の名を呼び制止する。


「やめとく?」


麻耶に問われ、凛は自分に問いかける。


この甘い刺激を、もう少しだけ味わいたいと思う自分は確かにここにいる。


_____さっき、正直な気持ちを伝えたら、麻耶は嬉しそうにしてくれた。


凛はそう思いながら、麻耶の眼を見つめた。


「……もっとして……」


正直に伝えた凛。そんな凛に、麻耶はやはり、子どものような笑みを返した。


_____これってキラースマイルってやつかも


凛は麻耶の笑顔を見て、そんな事を思った。
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