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初花凛々
第15章 蒼然暮色
麻耶にしては、随分皮肉っぽいなと凛は思った。


「優くんと知り合い?」

「全然。話したことねぇつったじゃん」

「よく知りもしないのにそんな風に言うの良くないよ」

「うぜー。風紀委員かよ」

「高校の頃やってた」

「ぽい」


イメージ通りだと、麻耶はケラケラと笑った。ようやくいつも通りの麻耶になったと凛はホッとした。








「麻耶ぁ」


甘える猫のように、打ち合わせの部屋をぴょこっと覗く女性_____


「もう終わった?」

「うん」


その声を聞き、凛はハッとした。


この女性の声には聞き覚えがあった。以前廊下で目撃した麻耶のキスシーン。その時に麻耶の名を呼ぶ声がして、それはこの女性の声だと凛は理解した。


名前は知らないが、顔は見た事があるどこの部の所属かもわからないその女性。
やはり椿や、先日コンビニで遭遇した女性と雰囲気がなんとなく似ている気がした。


「旅行楽しみだね」

「うん」

「温泉だって。混浴かなぁ」

「さぁ?それはないんじゃね?」


聞いちゃいけないと思いつつも、耳に入ってくる二人の会話。それにしても、随分あっけらかんとした話し口調の麻耶が凛は気になった。


「ねぇ麻耶ー」


その女性は、麻耶に話しかけながらチラチラと凛の方に視線を向けた。その視線を受けて、自分がいると話しにくいかと思い、凛は席を外すことにした。






「待って、凛」


_____え?


麻耶はそんな凛に声をかけてきた。


「一緒に帰ろ」

「えっ……」


凛は無意識に、先ほどの女性を見た。


するとその女性は、あの日のコンビニで会った女性のような


_____花に例えるならば薔薇


そんな視線を、凛へ向けていた。






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