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初花凛々
第15章 蒼然暮色
男の身体の仕組みをなにも知らない凛。


女の自分の身体のことさえ、ロクに知らなかったのだから仕方がない。


「ねぇなに?」

「……さぁ?」


誤魔化す麻耶に、絡む凛。麻耶は凛から離れようとするが、なにも知らない凛は更にくっついてゆく。


「もう夜になると涼しいよね」


麻耶の心中を他所に、凛は呑気にそんな事を言う。


「……そうだね」

「ねぇ、麻耶も上だけでも脱いだら?」

「え、なんで?」

「いつも私だけ裸で恥ずかしい」


なら凛も服を着ればいいと思うけれど、もっとその肌を味わいたいと麻耶の本能も確かに渦巻いている。


「……わかった」


麻耶はそう言い、自身も服を脱いだ。


「わっ」

「何その反応」


肌と肌が触れ合う感触に凛は驚いた。あまりに温かく、気持ちよくて。


「なんか……、気持ちよくて」


麻耶はそんな凛をからかうべく、わざと強く抱きしめた。けれどそれは凛をからかうどころか、自分の首をしめる行為だ。


凛の豊満な胸は柔らかに形を変え、麻耶の胸元にからみつき、乳頭が擦れる。その感触に、麻耶はこうして抱きしめた事を後悔した。


「あ、ほら。やっぱり何か当たって……」


凛はその先に視線を向け、当たっているものの正体を知り動きが止まった。


「あーぁ。気付いちゃったか」


麻耶はガッカリしたような、ホッとしたような、そんな声を出した。


「なっ、えっ!?いつもこんなんだった!?」

「なわけないじゃん。いつもこんなんなってたら会社行けねー」


何も知らない凛が可笑しくて、麻耶は笑った。


男の自分のことをもっと知って欲しいような、知って欲しくないような。麻耶は不思議な気持ちになった。
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