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初花凛々
第19章 十六夜
「どんな感じなのかなぁ」


まだ、絶頂というものを味わったことのない凛は興味津々に想像を膨らませた。


「女の人はどんな感じかわかる?」


凛はあろうことか、麻耶に問いかける。


「え……」


麻耶は戸惑った。女性が絶頂を迎えた瞬間は幾度もその目で見てきたが、まさかこうして説明をする羽目になるなんて。


「教えて?」


凛はまた、何も知らないまっすぐな目で、麻耶を見上げた。


「……ジェットコースターで落ちる感じ、とかってよく聞くけど」

「ジェットコースター?」

「目の前が白くなる、的な?」

「白……」

「気を失う人もいるらしいよ?」

「えぇっ」


そんなことあり得るのかと、凛は目を丸くさせ驚いた。


「それって苦しいのかな……?」

「いや、気持ちいいんじゃない?」


気を失うほどの気持ちよさとは、どれくらいのものなのかと、凛は期待に胸が膨らんでゆく。


「……なんでそんな目で俺を見んの」

「ふっふっふ〜」

「うわ、嫌な笑いだ」

「麻耶〜、やって」

「いやいやいや、ダメでしょ」

「出来ないの〜?あ、巷ではテクニック上級者と囁かれる麻耶も本当は全然ってやつ?」

「はぁ?」


凛は煽った。麻耶の火をつけるために。


「無理ならいいよ?別に」

「……じゃあやってやるよ」



麻耶も当然、凛に試されているだけだと気付いてはいる。けれども、こうして口車に乗ってしまう。


思い通りになった凛は、ふふ、とズルい顔で笑った。


この時、凛はまだ知らなかった。麻耶の本気、というものを。
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