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初花凛々
第20章 山、粧う
この店のイチオシでもある抹茶ティラミスが運ばれてきて、凛と優はまた、美味しいだのチーズが濃厚だの言いながらそれを味わった。


「……ところでさ」


ティラミスを食べながら、優がなにか思い出したように話しだす。


「須田と胡桃沢さんって、どんな関係なの?」

「え……?」


いきなりの問いに、凛は動揺した。


まさか、SEXの練習相手だなんて言えるはずがない。


友人同士だよ、と当たり障りなく交わせば良いのに、不器用な凛は気の利いたことも言えずにただオロオロとした。



「……えっと、あの、麻耶とは……」


凛は少々パニックになってしまっていたから、優の前で思わず"麻耶"と名前で呼んでしまう_____


その様子を見て、優は何かに気付いたように、心配そうな顔で凛を見た。


「……付き合ってるの?」

「ううん!付き合ってないよ!」

「仲良しの友人、って感じ?」


まさか優から友人かと問いかけられ、ちょうどいい流れだと凛は乗っかった。


「そう!そうなの!お友達だよ?麻耶とは!」

「……そっか」


優は凛の返事を聞き、ホッとした顔をした。


「須田は胡桃沢さんの手には負えないよ」

「……優くんは、麻耶の何かを知ってるの?」

「……まぁ、色々ね」

「色々って?」


優もまさか、こんなに凛が聞いてくるなんて思っていなかったのか、少し物怖じしているような、不安げな声を出す。


「広報部の女の子泣かせたり」

「それって髪の長い人?」


それなら知っている、と凛は思った。以前麻耶が廊下でキスしていた女性____、そして、麻耶に泣かされることを忠告してきた女性は、きっとその人だろうと凛は確信した。


「あれ、知ってんの?」

「うん」

「本当、仲が良いんだね。そこまで話してるなんて」


別に麻耶から聞いたわけではない。たまたまその場面に居合わせただけのこと。


「……広報部のその子だけじゃないよ。本社の____」

「……聞きたくない、そういうの」


凛は自分で言った言葉にハッとした。それも、強い口調だったから、尚更。


「ごめん、友達の悪口なんか聞きたくないよね」

「ううん、私も……ごめん」


凛自身、なぜこんなにモヤモヤとした気持ちになるのかわからない。けれど、麻耶の悪口を聞きたくないという思いはそこにあった。


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