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初花凛々
第20章 山、粧う
もうひとつ土産があると麻耶は言い、テーブルに置かれたのは二つのグラス。


赤のものと、青のもの。繊細な模様が施された二つのそのグラスは"薩摩切子"と呼ばれる伝統のガラス細工。


「……綺麗」


凛の口からは、思わずため息が漏れるほどそれは美しい。


照明が切子に反射し、赤と青の光がテーブルに映し出される。


凛は早速それを、壊さないよう丁寧に洗った。そして焼酎をとくとくと注いでいくと、テーブルに反射していた二つの光もゆらゆらと揺れた。


そっと乾杯をして、舌の上に焼酎を乗せた。


「濃いっ!」

「マジだ。店の人も濃厚つってたし」


今まで飲んだどの芋焼酎よりも濃く、まろやかで。以前麻耶に奢られた高級なものよりも印象に残る味だと凛は思った。


「この切子、横から見るのと上から見るのとだったら、模様が全然違う」

「赤と青でも模様違うよ」

「見せて」


凛は初め赤の切子を使用していたが、途中から麻耶の青を使用した。切子が変わるだけで、なんとなく酒の味も変わるような気がしてくるから不思議だ。


そして青の切子に口を付けてから思う。


_____間接キスだ、と。


それに気付いてしまって、凛は身体の中心にずくんといつもの切ない痛みが走った。


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