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初花凛々
第23章 紅葉狩り
宿について、夕飯までは自由時間。


統括はそれぞれの部署のみんなに非常口の位置の説明をしたりと忙しい。みんなが散り散りになったあとも、その場に残ってしおりを見ながら明日の予定を把握する。


ようやく統括も解散となったのは、30分以上もあとのこと。統括になると、他と比べ自由時間が断然少なくなるのがデメリットだ。


「凛、あれ見て」


解散と同時に、凛の隣には麻耶が来た。麻耶の指差す方には、立派なガラス張りの棚に納められた酒の数々。


「まだお昼なのにもうお酒の話?」


そう言いながら、凛はニヤリと微笑み進んでその棚を覗き込んだ。


「わぁ、金霧がある……!」

「それ美味いよね」

「うん。芋っぽくないよね。だけど美味しいという」


金霧島は、黄金色をした焼酎。芋焼酎なのだけれど、他みたいに鼻をツンと刺激するような匂いはしない。むしろフルーティなくらい爽やかで、舌触りも優しい。


「あ、澪もあるよ。麻耶好き?」

「あんまり得意じゃない」

「そうなんだ。私は割と好き」


澪は日本酒スパークリング。日本酒が苦手という若い女性たちにも好まれている。日本酒独特の味と香りを、炭酸で程よく緩和してくれている。


「凛ってなんでも飲めんの?ウイスキーは?」

「ううん、ウイスキーはダメ。なんかイソジンみたいな味がして苦手」

「イソジンって。ハイボールでも無理?」

「それなら大丈夫」


酒の話になると、二人は止まることを知らない。


色とりどりの酒が並ぶ棚の前で、こうして時間が過ぎてゆく。


「ここらに地元農家が営んでるワイナリーがあるらしいよ」

「えっ!気になる〜!ワイン飲めないけど」

「飲めないならダメじゃん」

「ううん、飲めるようになりたいの!」

「じゃー行く?」

「行くっ!」


やはり凛は麻耶といると楽しい、と実感する。酒の話でもそうだが、二人でいる時のリズムや、空気。それらの全てが心地良いと凛は思った。



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