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初花凛々
第4章 遣らずの雨
凛は男性経験がまるでないことが作用して、予想を大幅に越えるリアクションで応える。


須田はまるで新しいオモチャを手に入れた子どものように笑った。


「秘密にする約束でしょう!?」


廊下に出ると、凛は鼻息も荒く須田に訴えた。


「わかってるよ。俺なんも言ってないじゃん。口走ったのはくるちゃんでしょ?」

「その呼び名もダメ!話しかけるのもダメ!」

「あー、なに。わたあめから呼ばれんのはいいのに俺はダメって?」

「わたあめ?」

「くるちゃんの名付け親」


_____あぁ、新山さんのことか。


それにしても、わたあめに例えるとは秀逸。確かに新山はフワフワとした喋り方や、愛嬌たっぷりのキャラクターだから、わたあめという例えはピッタリだと思った。


「くるちゃん、て呼ぶのは新山さんだけ」

「なんで?」


須田は食い下がる。


凛も負けじと。


「仲の良い人にしか呼ばれたくないよ。それにいきなり須田くんがそんな呼び方したら、みんな変に思うじゃない」


凛は、みんなというよりは西嶋に変に思われるのが嫌だった。


須田と仲良く思われるのも嫌だし、経験がないということがバレるのも嫌だ。


こんな個人的で面倒くさい我儘が、須田に通用しないとはわかっていても


凛は懇願するしかなかった。
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