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初花凛々
第25章 天つ乙女
工場見学を終え、次の目的地はパワースポットとして今話題のとある神社だった。


元々その地域の神様を祀ったその神社。人気女優がそこの神社で購入したパワーストーンを身につけたところ、幸せな結婚が出来たとテレビで公表したことによりその神社は瞬く間に人を呼ぶようになった。


社務所にて、女性社員たちは皆そのパワーストーンを求めた。ローズクォーツの石が可愛らしくアレンジされ、ブレスレットとして身につけることが出来る。そのデザインもまた、女性好みの淡い色合いでなんとも可愛らしい。


凛もまた、例外ではなくその人混みに紛れこんでいる。


そんなものに興味がない男性社員たちは、バスで待機したりと様々に時間を潰した。


「胡桃沢さん、もしかして恋愛成就のやつ買った?」


凛も無事にパワーストーンを購入したのは、行列に並んでから30分以上も経過した頃。いそいそと紙袋を持ってバスまで向かっていた時、話しかけてきたのは西嶋と麻耶だった。


「ううん、違うの」


てっきり凛も恋愛成就のパワーストーンを購入したものだと決めつけていた西嶋と麻耶。では何を買うためにあんなに並んだのかと、再び問う。


「家族に健康祈願のパワーストーンを買ったの」


ほら、と、凛は透明なセロハンに包まれた三つのパワーストーンを見せた。恋愛成就がピンク色の配列なのに対して、健康祈願のそれは青色の配列だった。


「兄は今も駅伝に出る事があるし。それにお母さんは毎日腰が痛いとか肩が痛いって言うから。お父さんはね、お酒を毎日飲むから、特に危険と思って」


凛は嬉しそうに土産についての説明をした。健康でいて欲しいけれど、ワインも買ってしまって私は何がしたいのかと、笑いながら。


「凛の分はないの?」

「あっ!そういえばそうだよ!買ってない!」


凛は慌てた。自分は恋愛成就のパワーストーンが欲しいかも、と、下調べまでしていたのに。


やっちゃったと、凛は残念がった。


「……旅行あるあるだよね。土産選びに必死で、自分の分が無いっていう」

「まさにそれ」


凛はそう言って、困ったように笑った。

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