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初花凛々
第26章 郷愁の想い
ゴオゴオと、新幹線の走る音がする。


耳がキンと痛むのを覚えながら、凛はジッと、麻耶の横顔を眺めた。


「父親は持病持っててしばらく入退院繰り返してたんだけど、一度も見舞いにすら行かず。俺が見舞って良くなるもんでもないしと思ってたんだ」


麻耶は若かりし日の事を懐かしむように窓の外を眺め、そして、凛に視線を移した。


「……でも、あとから父親が書いた日記が出てきて。そこに俺の名前が頻繁に出てきてたのを遺品整理の時に見つけたんだ」

「そうなの……、お父さん、日記をつけてたんだね……」

「もう、さ。泣いたよね。父親が死んだってことよりも、俺は何をやってんだって」

「……麻耶」

「それからかな。父親の教えを引き継ぎ女に優しくしてたら、いつのまにかプレイボーイに」


麻耶はネタにすり替えたが、凛はどう反応したらいいのかわからずに曖昧な笑みを浮かべた。


「ってのは冗談にしても。……だから凛には、同じような後悔して欲しくない。生きてる時しかその人とは会話出来ない。思いを共有出来ないんだよ」


麻耶の話に凛は聞き入った。


それは魔法のように、スッと凛の心に染み渡って。


「父親もさ、凛のこと可愛いに決まってるよ。まだ出会って僅かな俺ですらそう思うのに」

「な、なにを言ってんの」

「マジだから」


急に麻耶は真面目な顔つきになって、凛と視線を合わせた。


そして、重なる唇_____


言葉はないが、凛は背中を押された気がした。
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