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初花凛々
第26章 郷愁の想い
ついに新幹線は宮城へと到着した。


麻耶は緩めていたネクタイをキュッと締め上げた。


「麻耶……」


改札で二人は別れる。その時、ほぼ無意識に凛は麻耶の名を呼んだ。


きちんと向き合おうという想い。失った時間はもう戻らないということを、麻耶が教えてくれた。


「私、頑張るから」

「うん」

「麻耶の分もっ……」


凛は堪らずに、一粒の涙を溢した。


その涙は、まだ少しだけ残る不安の分の涙。


「これやるよ」

「え?」


麻耶は凛の掌に、何かを握らせてきた。


凛はそっと掌を開く。


するとそこにあったのは、桃色のブレスレット。


「あの日パワーストーン買えなかったんだろ。その代わり的な。空港で売ってたやつだから、偽物かもしんないけど」

「えっ、嘘っ、えっ」

「しかもそれ、恋愛成就じゃなくて開運のやつだったけど」


凛はそのブレスレットを腕にはめてみた。


キラ、と、改札の窓から差し込む光にそれは反射して。


腕を動かすたび、その輝きは色を変えるように美しい。


「ありがとう、麻耶」

「いえいえ」

「大好き!」


それはそのブレスレットのことを言ったのか、それとも。


それは凛にも麻耶にもわからない。


凛は麻耶の言葉を胸に、そしてブレスレットをキラキラと輝かせながら


改札を出て、一歩一歩、家へと歩を進めた。




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