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初花凛々
第26章 郷愁の想い
「あら、凛」

「お母さん!」


しばらくして、リビングに母親が入ってきた。


「たくさん買い物してきたよ」


母親は、久しぶりに帰ってきた娘のためにご馳走を振舞おうと思っていた。凛の大好きな肉じゃが、牛タンのネギのせ、三角油揚げのおろしがけ、カレイの煮付け。あとは新鮮なお刺身など。


母親の後ろから、パンパンに膨れ上がったエコバッグを二つも抱えた父親がやってきた。


やはり凛は、父親を目の前にすると萎縮してしまう。


何を言われるのかと、身構えてしまうのだ。


「_____た、ただいまっ」


凛は勇気を振り絞りそう言った。緊張のため、少々声が大きくなってしまった気もする。


そんな凛に対し父親は、「おう」と一言、顔も見ずに返した。そしてすぐに、書斎へと閉じこもってしまった。


「緊張してるのよ」


母親は凛の肩にポンと手を置き、そう言った。



「……みんなにお土産があるの」

「あら、そうなの?」

「お兄ちゃんとお母さんにはこれ」

「ありがとう。どれどれ?」


凛はパワーストーンのブレスレットを差し出した。


すると袖の隙間から、先ほど麻耶からもらったブレスレットがチャラ、と鳴った。


「これってあの有名な神社の!?」

「そうそう」

「お昼の情報番組で見た!」


母親は土産を喜んだ。


徹夜続きの大地もまた、すぐに身につけてくれた。


「あと……お父さんにもあって」

「渡してきたら?」

「書斎に入ったら怒られそう」

「大丈夫よ」


凛は再び緊張に襲われる。


昔書斎に入ったら、怒鳴られた事もあった。


手はあげられないものの、幼い凛にとって父親の大声というのは鬼のように恐ろしかった。


凛はもう一度、手首にはめられたブレスレットを見た。


_____頑張れよ


麻耶の言葉が思い出された。


_____凛のこと可愛いに決まってる


頑張るって決めた。そう凛は思い直し、土産を手に父親の書斎へと向かった。

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