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初花凛々
第27章 小春日和
「お疲れ様でした、麻耶」
凛は労った。取引先に気を遣い、苦手な牡蠣をたらふく食べさせられて。そんな疲れている状態の時に凛の相手をさせられて。
「ほんっとーに、ごめん」
凛は謝罪した。
そんな凛に麻耶は何も言わず、ただ、微笑むだけ。
_____ロクでもない男に決まってる
昨日の父親の言葉を思い出し、凛はまた嫌な気持ちになった。
プルルルル〜
と、今度は聞き覚えのある電子音が聞こえた。凛の携帯電話が、着信を知らせている。
「げっ」
画面に表示されている名を見て、凛は思わずそんな声を漏らす。
「やだ!どうしよう!実家からだ!」
「出れば?」
「えっ!無理だって!」
昨夜眠りにつく前には向き合おうと前向きだったはずなのに、いざこうなると逃げ腰になる。
あたふたしていたら電話は切れ、ホッと胸を撫で下ろした。……のも束の間。今度は大地からの着信だ。
兄の電話ならばまぁいいかと、凛は渋々ながらも応答ボタンを押した。
「_____ 凛」
「!!」
電話の向こうから聞こえてきた声は、大地ではなく、父だった。
_____騙された!
凛はまんまと罠に引っ掛った気がした。
「おっ、おと」
急に噛み始めた凛を見て、側で見ていた麻耶も察したようだった。そーっとその場を離れることにした。
喧嘩とはいえ、血の繋がった父と娘。きちんと向き合えばきっといい方向へ向かうのではないかと、父と電話をする凛の背中を見て麻耶は思った。
「はっ!?無理!無理です!」
麻耶はバスルームに入ったが、電話をする凛の声が丸聞こえだ。
「いやいやいや!それは有り得ませぬ!」
武士のような口調の凛。一体何事かと思いながら、可笑しくて、麻耶は笑ってしまった。
「……麻耶、一大事です」
麻耶がシャワーを浴び終えると、凛はベッドの上で正座をして麻耶を待ち構えていた。
「何があった」
凛には度々驚かされるが、この時も麻耶は例のごとく驚かされる。
「父が……、麻耶を連れて来いと申しておられます」
「えっ!?」
凛は眉を下げ、申し訳なさそうに麻耶を見上げた。
凛は労った。取引先に気を遣い、苦手な牡蠣をたらふく食べさせられて。そんな疲れている状態の時に凛の相手をさせられて。
「ほんっとーに、ごめん」
凛は謝罪した。
そんな凛に麻耶は何も言わず、ただ、微笑むだけ。
_____ロクでもない男に決まってる
昨日の父親の言葉を思い出し、凛はまた嫌な気持ちになった。
プルルルル〜
と、今度は聞き覚えのある電子音が聞こえた。凛の携帯電話が、着信を知らせている。
「げっ」
画面に表示されている名を見て、凛は思わずそんな声を漏らす。
「やだ!どうしよう!実家からだ!」
「出れば?」
「えっ!無理だって!」
昨夜眠りにつく前には向き合おうと前向きだったはずなのに、いざこうなると逃げ腰になる。
あたふたしていたら電話は切れ、ホッと胸を撫で下ろした。……のも束の間。今度は大地からの着信だ。
兄の電話ならばまぁいいかと、凛は渋々ながらも応答ボタンを押した。
「_____ 凛」
「!!」
電話の向こうから聞こえてきた声は、大地ではなく、父だった。
_____騙された!
凛はまんまと罠に引っ掛った気がした。
「おっ、おと」
急に噛み始めた凛を見て、側で見ていた麻耶も察したようだった。そーっとその場を離れることにした。
喧嘩とはいえ、血の繋がった父と娘。きちんと向き合えばきっといい方向へ向かうのではないかと、父と電話をする凛の背中を見て麻耶は思った。
「はっ!?無理!無理です!」
麻耶はバスルームに入ったが、電話をする凛の声が丸聞こえだ。
「いやいやいや!それは有り得ませぬ!」
武士のような口調の凛。一体何事かと思いながら、可笑しくて、麻耶は笑ってしまった。
「……麻耶、一大事です」
麻耶がシャワーを浴び終えると、凛はベッドの上で正座をして麻耶を待ち構えていた。
「何があった」
凛には度々驚かされるが、この時も麻耶は例のごとく驚かされる。
「父が……、麻耶を連れて来いと申しておられます」
「えっ!?」
凛は眉を下げ、申し訳なさそうに麻耶を見上げた。