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初花凛々
第27章 小春日和
凛は父親に、麻耶は恋人ではないと再三口頭にて伝えた。にも関わらず、会わせろと譲らなかった。


「なになに、それって俺、殴られたりとかすんのかな?」

「やっ!流石にそれは……」


ない、とは言い切れないのが正直なところ。何せ凛には男性経験がまるでないために、そんな場面は今までにないのだから想像がつかない。


「……凛がいいならいいよ、行っても」

「えっ!い、いいの!?」

「うん。スーツ昨日プレスしといて良かったわ」


麻耶はそう言って、替えも持ち合わせていたという真っ白なYシャツを身に纏った。


「ボッとしてんなよ。凛も早く準備して」

「あっ、は、はい!」


麻耶に促されて、凛もシャワーを浴び身支度を整えた。


麻耶は皺一つないスーツを着て、ネクタイを上まで締めた。


「就職面接より緊張する」


そう言って麻耶は笑った。




「俺の設定ってなんになってんの?」


実家へ向かう途中、麻耶は凛に問いかけた。


「えっと、恋人ではないよって言った」

「ふーん」

「会社の同僚で」

「うん」

「仲の良い友人の一人です、って」

「なんか熱愛発覚した時の芸能人みてーだな」


実家への道を、麻耶と2人で並んで歩いた。


凛はなんだかとても不思議な気持ちになって、隣にいる麻耶の横顔を見上げた。


「……麻耶、ごめん」

「なにが?」

「こんなことになって」

「お父さんと仲直りしなきゃだよ」


なんだか麻耶は余裕があるように見えた。


もしかしたら、こういうシチュエーションにも麻耶は慣れているのか、とも思った。





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