この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
初花凛々
第27章 小春日和
凛はごくりと息を飲んだ。その音は、隣に座る麻耶にまで届いた。
「な、仲良いよ!」
嘘じゃない。凛は麻耶と確かな友情を築き、今こうしてここにいる。
そんな大切な友人である麻耶の事を、昨日はパッとしたイメージだけで父親に意見され腹も立った。
けれど凛は思い出す。そういえば自らも元々麻耶に抱いていたイメージは、父親が述べたものと似たようなものだった、という事も。
そんな独断と偏見は、実は父親譲りなのではないかと思った。
「……麻耶はね、職場の仲間の一人なの」
家族が見守る中、凛は語り出した。
「初めは……、そうだね。お父さんと同じく、私も麻耶に対して色眼鏡で見ていた部分があった」
いかにも軽そうな見た目と、それに伴った社内での噂。麻耶は凛が最も苦手とする異性の代表的なタイプだ、と思っていた。
ひっそりと道の端を歩いてきた凛にとって、麻耶は真逆のようだった。
まるでランウェイのど真ん中がお似合いの麻耶は、眩しすぎた。
「でもそれは違った。麻耶には何度も私、助けられてる」
そう、麻耶のお陰で、凛は随分前向きになれた。女として、人として。麻耶に可愛いと言われるたびに、凛は心から嬉しかった。
身体で色んなことを教えてもらい、女としての悦びも知った。
良い子だねと言われると、幼い頃の自分が救われる気がした_____
「……麻耶がいなかったら私、こうしてここに……家に帰ってくることすら、出来ないままだったと思う」
凛は今までの事を思い出し、今にも涙が溢れそう、と思った。
そして思う。
麻耶にしてもらった分、私は何も返せていない、と。
_____強いて言うなら、凛が幸せになる姿が恩返しかな
いつだったか、麻耶はそう言っていた。
幸せになる姿、それはきっと凛が恋人を見つけるという事なのだろう。わかってはいるが、凛はまだそんな日が来るなんて想像出来ない。
けれど確実に、麻耶から離れ一人立ちしなければならない時が、刻一刻と近づいている事はわかる。
「……凛」
父親に名を呼ばれ、凛はトリップした頭を再び戻し、視線を父親に向けた。
先日酷い言葉を浴びせてしまった父は、見たことのないような……
けれども懐かしいような。
そんな目で、凛を見ていた。
「な、仲良いよ!」
嘘じゃない。凛は麻耶と確かな友情を築き、今こうしてここにいる。
そんな大切な友人である麻耶の事を、昨日はパッとしたイメージだけで父親に意見され腹も立った。
けれど凛は思い出す。そういえば自らも元々麻耶に抱いていたイメージは、父親が述べたものと似たようなものだった、という事も。
そんな独断と偏見は、実は父親譲りなのではないかと思った。
「……麻耶はね、職場の仲間の一人なの」
家族が見守る中、凛は語り出した。
「初めは……、そうだね。お父さんと同じく、私も麻耶に対して色眼鏡で見ていた部分があった」
いかにも軽そうな見た目と、それに伴った社内での噂。麻耶は凛が最も苦手とする異性の代表的なタイプだ、と思っていた。
ひっそりと道の端を歩いてきた凛にとって、麻耶は真逆のようだった。
まるでランウェイのど真ん中がお似合いの麻耶は、眩しすぎた。
「でもそれは違った。麻耶には何度も私、助けられてる」
そう、麻耶のお陰で、凛は随分前向きになれた。女として、人として。麻耶に可愛いと言われるたびに、凛は心から嬉しかった。
身体で色んなことを教えてもらい、女としての悦びも知った。
良い子だねと言われると、幼い頃の自分が救われる気がした_____
「……麻耶がいなかったら私、こうしてここに……家に帰ってくることすら、出来ないままだったと思う」
凛は今までの事を思い出し、今にも涙が溢れそう、と思った。
そして思う。
麻耶にしてもらった分、私は何も返せていない、と。
_____強いて言うなら、凛が幸せになる姿が恩返しかな
いつだったか、麻耶はそう言っていた。
幸せになる姿、それはきっと凛が恋人を見つけるという事なのだろう。わかってはいるが、凛はまだそんな日が来るなんて想像出来ない。
けれど確実に、麻耶から離れ一人立ちしなければならない時が、刻一刻と近づいている事はわかる。
「……凛」
父親に名を呼ばれ、凛はトリップした頭を再び戻し、視線を父親に向けた。
先日酷い言葉を浴びせてしまった父は、見たことのないような……
けれども懐かしいような。
そんな目で、凛を見ていた。