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初花凛々
第27章 小春日和
「……悪かった。凛の大切な友人のことを、あんな風に言ってしまって」


凛は驚いた。


あの、父親が。頑固で堅物な父が頭を下げるだなんて。それも他でもない凛相手に。


「お、お父さん!私もごめんなさい!……本当は嫌いなんて思っていないから……」

「凛……」

「あんまり好きではなかったけどね」


予想外に飛び出した凛の本音。それにはその場にいた母親も、大地も。隣に座る麻耶も驚き凛を見た。


けれど、父親だけは。


「はっはっは」


と、大声で笑い始めた。




















「……お父さんね、嬉しかったみたいよ」

「え……?」


新しいお茶を淹れようと、母親と共に席を立った凛。


その時に母親が、凛にそっと教えてくれた。


「昨日、凛が初めて自分に遠慮なく喋ってくれたって。ルンルンしながら凛からのお土産眺めてたよ」

「なにそれどういうこと?」

「ふふ。凛はいつも自分に何も言ってくれないって拗ねてたから」

「それはお父さんが威嚇するからじゃん」

「女の子の扱いわからないのよ。あの人、男の5人兄弟で育ってるから」

「なるほど」

「それにね_____ 」


母親は父親がひた隠しにしてきたある秘密を凛に暴露した。


父親の書斎_____


昨日凛が手を伸ばしかけた、白い背表紙の正体は。


「凛の成長アルバムなのよ、あれ」

「そうなの?」

「よく写真撮ってたじゃない。大地の写真よりも凛の写真の方がたくさんあるのよ」

「知らなかった」

「自分は5人兄弟の末っ子で、思い出の写真がほとんどないんですって。だからそれがすごく寂しかったから、凛にはそんな思いさせたくないって」


父親は不器用な人なのだと、いつだったか大地が凛に話したことがあった。そのことを今、凛はようやく理解した。


「そうか、麻耶くんは生まれも育ちも静岡なのか」

「ええ、そうなんです」


リビングの方からは、父親と麻耶が雑談する声が聞こえてくる。父親はこんなに穏やかな顔をしていたっけと、凛は新発見をした気分だった。


それはまさしく、父親に対する色眼鏡が外れたからかもしれない、と凛は思った。
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