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初花凛々
第4章 遣らずの雨
「終わった〜!」


凛が歓喜の声を上げた頃、時刻は既に20時を回っていた。


「うわっ!もうこんな時間!須田くん、付き合わせてごめんね」

「別に」

「手伝ってくれてありがとう」

「……なんも助けになってなかったけどね」

「ううん。一人だと眠くなっちゃうし。助かったよ」

「もー帰れんの?」

「うん!」

「じゃあ、行こう」


そこで凛は、まだあの約束は有効だったんだと思った。


「どこ行くの?」

「いいところ」

「えぇ!?」


須田のいう"いいところ"とは、とんでもなく悪いところな気がする。凛は嫌な予感を胸に秘めながらも、前を歩く須田に従った。






「ねぇ、くるちゃん」

「またその呼び方?」


会社を出て、煌びやかなネオンが散りばめられた通りを歩いていると、須田が話しかけてきた。


「人を疑うってこと知らないよね」

「疑う?」

「人が良いって言われない?」


凛は思い返してみる。


「……ない。むしろ私は、性格悪いって言われる」


そう。凛は昔から、そんな風に言われることが多かった。


実際社内にも、"高嶺の花気取り"と陰口を叩く存在を凛も知っていた。


「ふーん」


須田は、興味がないような相槌を打つ。


あまり深くを追求しない空気。それが凛には心地よかった。


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