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初花凛々
第4章 遣らずの雨
凛は、周りからの評価ばかりを気にして、うまくたち振る舞えない時期もあった。
学生時代、クラス替え直後の新学期。夏休みが終わる頃にようやく友人が出来る。そして、社会人になって今の会社に勤めてからもそう。勤めて三年目にして、ようやく周りと打ち解けた。
ぼんやりしていると、「着いたよ」と、前を歩いていた須田が振り返りそう言った。
「え……?」
「入ろ」
着いたのは、趣のある焼き鳥屋だった。
店先には、ぼんやりと赤提灯が浮かんでいる。
「へいらっしゃーい!」
暖簾を潜ると、威勢の良い声が聞こえる。鼻を擽るのは、炭の匂いと香ばしいタレの香り。
「オシャレなイタリアンとかの方が好き?」
「ううん!焼き鳥すっごく大好き!嬉しい!」
パアッとお日様のような笑顔が、凛の顔に広がった。
「だと思った。」
「どうしてわかったの?私が焼き鳥好きだって」
「……なんとなく」
大きなメーカーに勤務するOLならば、洒落たイタリアンやフレンチなどを好みそうなものだけれど、凛は違う。
凛にとっては、こんな風に昔ながらの焼き鳥屋や、屋台の方が嬉しいのだ。
「お酒飲む?ここ、甘いカクテルとかないけど」
「いい、いい!」
「なに飲む?」
迷うことなく凛が注文を決めたのは芋焼酎。
「へへ、私好きなんだぁ」
「ん、いいね。俺も好き」
"_____親父かよ"
クラス会や、友人たちと飲むときに芋を頼むと決まってそう言われてきた凛にとって、須田の反応は嬉しいものだった。
そして、運ばれてきたのは"村尾"
手を出しにくいほど高級なもの。
それを見た凛は、一瞬で青ざめる。
「私今日は持ち合わせが…」
そんな凛に、須田は心配ないと言った。
「ボトルキープしてるやつだから、大丈夫」
「でも……」
「いいって。昨日、飯食わしてくれた礼だよ」
「あんなの、あり合わせで作ったものなのに」
「いいから。飲め」
「はい……」
強引な須田に凛は従った。
いつもは紙パックに入れられた激安芋焼酎を飲んでいる凛にとって
"村尾"の味は、熱く喉元を通ってゆく。
学生時代、クラス替え直後の新学期。夏休みが終わる頃にようやく友人が出来る。そして、社会人になって今の会社に勤めてからもそう。勤めて三年目にして、ようやく周りと打ち解けた。
ぼんやりしていると、「着いたよ」と、前を歩いていた須田が振り返りそう言った。
「え……?」
「入ろ」
着いたのは、趣のある焼き鳥屋だった。
店先には、ぼんやりと赤提灯が浮かんでいる。
「へいらっしゃーい!」
暖簾を潜ると、威勢の良い声が聞こえる。鼻を擽るのは、炭の匂いと香ばしいタレの香り。
「オシャレなイタリアンとかの方が好き?」
「ううん!焼き鳥すっごく大好き!嬉しい!」
パアッとお日様のような笑顔が、凛の顔に広がった。
「だと思った。」
「どうしてわかったの?私が焼き鳥好きだって」
「……なんとなく」
大きなメーカーに勤務するOLならば、洒落たイタリアンやフレンチなどを好みそうなものだけれど、凛は違う。
凛にとっては、こんな風に昔ながらの焼き鳥屋や、屋台の方が嬉しいのだ。
「お酒飲む?ここ、甘いカクテルとかないけど」
「いい、いい!」
「なに飲む?」
迷うことなく凛が注文を決めたのは芋焼酎。
「へへ、私好きなんだぁ」
「ん、いいね。俺も好き」
"_____親父かよ"
クラス会や、友人たちと飲むときに芋を頼むと決まってそう言われてきた凛にとって、須田の反応は嬉しいものだった。
そして、運ばれてきたのは"村尾"
手を出しにくいほど高級なもの。
それを見た凛は、一瞬で青ざめる。
「私今日は持ち合わせが…」
そんな凛に、須田は心配ないと言った。
「ボトルキープしてるやつだから、大丈夫」
「でも……」
「いいって。昨日、飯食わしてくれた礼だよ」
「あんなの、あり合わせで作ったものなのに」
「いいから。飲め」
「はい……」
強引な須田に凛は従った。
いつもは紙パックに入れられた激安芋焼酎を飲んでいる凛にとって
"村尾"の味は、熱く喉元を通ってゆく。