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初花凛々
第29章 山茶花咲いて
凛は突然のことに困惑しつつも、遂にこの日が来たのかと、やけに冷静に受け止めている。


いずれこんな日が来ることは、初めからわかっていたこと。


麻耶は凛が前へ進めるよう、ただ、サポートしてくれただけなのだから。


「……じゃあさ、御礼も込めて……、仕事納めの日、二人でお食事したい」


それならいい_____?と、凛は恐る恐る問いかけた。


麻耶は少し悩んで、「その日接待がなければ」と言った。


営業部の面々は年末年始、それこそ目の回るような忙しさを迎えることを、凛もなんとなくだけれど知っている。


けれどほんの少しでも良いから、麻耶と過ごしたいと凛は思っていた。


その時間、SEXも口付けもなくたっていい。


ほんの一瞬でも、と。
















「くるちゃん先輩、具合でも悪いですか?」


新山にそう話しかけられ、凛は一気に現実へと引き戻された。


顔をあげると、目の前には先輩を心配そうに見つめる新山の姿があった。


「あっ、だ、大丈夫!」

「ならいいんですけど……、疲れてたら一次会で抜けるのもありですよ」

「うん、今日はそのつもり」


この日、凛の会社の忘年会が行われていた。


場所は会社の近くに広がる飲み屋街の一角。


店一軒を丸々貸し切らなければならないほど、凛の会社の人数は多い。


_____もう大丈夫そうだよな


そう麻耶に言われる前までは、凛はこの忘年会のあとは、麻耶と二人で過ごそうと当然のように思っていた。


けれどその当たり前なんて、今は泡のように消えた。

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