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初花凛々
第4章 遣らずの雨
礼、と須田は言ったけれど。あれは凛が口止めのためにした事なのに。


小さなテーブルを挟み、向かえに座る須田を凛は見つめる。


「……なに?惚れた?」

「はぁ!?」


凛をからかい、須田はククッと笑った。


「芋ってさ、癖があるけど、ハマると抜け出せないよね」

「それわかる」


口に含むと、ツンとした香りが鼻から抜けて行く。舌触りはとても滑らかで。芋焼酎の良さをわかりあえる人が周囲にいない凛は、須田に同意され素直に嬉しいと感じた。


「普段はなに飲んでんの?」

「黒霧島とかかな」

「俺も」


チビチビと嗜みながら、香ばしい焼き鳥を頬張る。至福の幸せだと凛は思った。


「もう一杯イケる?」


開いたグラスを見て、須田が促す。


「いえ、もう充分です!」


ほぼ毎日晩酌する凛にとって、まだまだ満たされないところだけれど。村尾の価値を知っている凛は遠慮した。


そんな凛を見透かして、須田は凛のグラスに村尾をトクトクと注いだ。


いいの?と視線で問う凛。それに対し、須田は優しい笑みを返した。
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