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初花凛々
第30章 愛の戯れ
翌朝、まだ薄暗い時間帯に凛は目が覚めた。


覚めたというよりも、ほぼ眠れなかったような気もするし、ずっと夢の中にいたような気もする。


ベッドに横になったまま、部屋の間接照明だけでぼんやりと照らされたリビングを眺めた。


_____森伊蔵。


昨日麻耶が、凛のために用意してくれた芋焼酎が目に入った。


高級品であるそれ。


凛は値段は元より、誕生日を知っていてくれたという事が嬉しかった。


12/27


昨日、凛は25になった。そして、女にもなった。


世間は年の瀬にせかせかと忙しい季節。それだけに、凛の誕生日は急ぎ足でいつも過ぎてゆく。


背中に感じるのは、大好きな人の温度。


こんなに幸せでいいのか、と思う反面、こんな幸せはきっと気のせいだと思う自分もいる。


二つの両極端な心がせめぎ合う。


もし、目が覚めて。麻耶が昨日のことを謝ってきたら、気にしてないよと言おうと凛は思った。


私がお願いしたことだから、と。


昨日は凛の誕生日だし、優しい麻耶のことだ。もしかしたら、凛の気持ちを無下にできないと思って、合わせてくれただけかもしれない。


それに、椿や、広報のあの子達とは明らかにタイプの違う凛。そんな凛を相手にするなんて、きっと麻耶は気を遣ったのだと、凛はそればかりを考えていた。



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